運動連鎖
股関節症の方で腰や膝に痛みや不具合を訴えるケースは多いです。
痛む場所が増えていくことは、それだけで不安になりますし、日常生活においても負担が増し、
心身共に強いストレスとなります。
ストレス状態は更なる痛みを引き起こすので、早急に解決しなければなりません。
今回は、何故痛みが他の場所に拡がるのかについて『運動連鎖』という考え方からみていきます。
●連動連鎖とは
人体の骨の数はおよそ200個といわれ、骨と骨が接することで関節がつくられます。
例えば棒状の骨は、両端に関節を作るため、片側の関節が動くと反対側の関節も影響を受けます。
このように複数の関節が相互に影響を及ぼし連鎖的に動くことを運動連鎖と言います。
運動連鎖は大きな力や安定性を生み出すと同時に、一つの関節の負担を減らすことができるのです。
●股関節は骨盤や腰と連鎖して動く
仰向けに寝た状態で股関節を屈曲します。
最初は股関節だけが動きますが、途中から骨盤後傾が加わります。
さらに屈曲を続けると、今度は腰椎の後弯がはじまります。
このようにして大腿骨から骨盤へ、骨盤から腰椎へと運動が連鎖していきます。
一つの関節の動きに他の関節が連動するのです。
このとき大腿骨から骨盤への運動連鎖は股関節を介して行われ、骨盤から腰椎への運動連鎖は仙腸関節を介して行われます。
股関節や仙腸関節に問題があるとうまく連鎖して動きません。
運動連鎖ができないとエネルギーの伝達が十分に行えず、その結果一つの関節に対して負荷が大きくなり、痛みが生じます。
●股関節だけが悪いのか
先日いらした方が「股関節症になった原因は巻き爪だと思うんです」と仰って、私はその時に運動連鎖の観点から全身をみることの必要性を痛感しました。
巻き爪の痛みは体重のかけ方や足底のつき方に影響します。
その影響をカバーしようと無意識に股関節や膝関節が負担を背負い、最終的には負担は全身に拡がります。
もともと股関節が痛くても、じつは他の部位が原因になっている場合があります。
ですから股関節が悪いからといって、股関節だけをみているわけにはいきません。
股関節の役割や他の関節との連動などを考え、膝関節や足関節、腰も含め広い視野での治療を心掛けていきます。